月餅巡り

月餅といえば広式 バラが香るこし餡

 茶色くテカテカとした皮と、ぎっしり詰まった餡が特徴の、広東省発祥「広式月餅」。現在では中国各地で生産され、月餅の代表といっても過言ではないほど有名だ。日本でも月餅といえば、このスタイルを思い浮かべる人が多いだろう。

1851年創業の老舗広東料理店「杏花楼」では、「綠豆蓉月餅」(9・5元)や「伍仁月餅」(11・8元)など7種類の味の広式月餅を販売しており、「玫瑰豆沙月餅」が特に人気。広式の特徴である表面の艶やかな凹凸模様が繊細で、芸術作品のようだ。切った断面も美しく、薄いが崩れない柔らかな皮の中に、こし餡がぎっしり詰まっている。滑らかな餡は、やさしい甘さでほんのりとバラの香りがする上品な味だ。こし餡にバラが合うとは意外だが、重くなりがちな餡に爽やかさを与えるという、素晴らしい役割を果たしている。

 

サクサク感がポイント やみつきになる旨味とコク

 蘇州市発祥で、江蘇省・浙江省・上海市一帯で長年愛されている「蘇式月餅」は、外皮がサクサク、ホロホロと落ちやすいのが特徴。上海人がこよなく愛するのは、挽き肉餡が入った「鮮肉月餅」だ。市内の各老舗菓子店では、中秋節前になると、この餡を使ったアレンジメニューを続々と販売、市民を魅了している。

今回は、肉と野菜を両方楽しめる「梅干菜鮮肉月餅」(4元/個)を、開業20年の中華菓子専門店「詹記桃酥」でオーダー。ちょこっと摘まむのにちょうどいい、小さめの月餅には「梅干菜」の赤い文字が押され可愛らしい。口に運ぶと、皮があまりにサクサクで崩れやすく、若干食べづらいが、ジューシーな豚ひき肉とカラシナの漬物という組み合わせは、旨味とコクのある塩気による相乗効果で、おいしさがグンと引き立つ。中国茶にも酒にも合う塩味系菓子だ。

 

生地にこだわりあり ナッツたっぷり進化型月餅

 山西省の月餅といえば、300年の歴史を持つ「郭杜林餅」が有名だが、伝統的月餅から改良したこの「蛋月焼月餅」も、ここ数年で人気急上昇中だ。

晋式月餅の有名店「双合成」では、この月餅が看板商品。今回はネットショップから評判の「伍仁味」(8元/個)を取り寄せた。玉子を練り込んだ月餅生地が特徴で、表面にキレイな紋様が型押しされた月餅を割ると、木の実がギッシリと詰まっている。餡として使われるアーモンド、クルミ、ピーナッツ、ゴマ、ヒマワリの種は、それぞれ中国古代の道徳標準である「仁、儀、礼、志、信」と発音に近いことで、「伍仁」と呼ばれているそう。ナッツそれぞれの食感を楽しむと同時に、生地と餡が混ざり合い、まったりとした旨味が口の中に広がる。ゴマのまろやかさと、アーモンドの酸味が後味爽やか、風味豊かな中華菓子だ。

 

知名度急上昇中 甘じょっぱい系月餅

 滇式月餅の〝滇〟とは雲南の別称で、コチラは雲南省近辺で作られている月餅。この地域の月餅は、雲南特産の食用バラを使用した「鮮花餅」も有名だが、今回は雲南ハムを使用した「雲腿月餅」を紹介しよう。

上海でこれを販売している店はとても少ないが、今は中秋節前の月餅シーズン。「久光百貨」内に9月21日(火)まで、滇式月餅の専門店「傣鄉園」がオープンしている。「雲腿月餅」の具は、雲南省産の豚と塩で作られたハムとハチミツ。直径5㌢程度と小振りな月餅は、さっくりとしたクッキーのような皮の中に、細切れのハムがたっぷりと入っている。口に含んですぐはハチミツの甘味を強く感じるが、ハムを噛むとコクと塩分で調和され、ちょうどいい甘じょっぱさに。トースターで軽く温めて、ハムの脂っこさを和らげる中国茶とともに食べるのがオススメ。

 

老舗ホテル発祥 カスタードのモダン月餅

 中国香港からはカスタード餡の港式月餅を紹介。これは、1986年にホテル「ザ・ペニンシュラ香港」のシェフによって、従来の月餅にモダンな解釈を加えて考案された。今では、それぞれの店独自の港式月餅が製造されるようになり、香港を代表する月餅となった。

中国香港発の「奇華餅家」は、「パイナップルケーキ」(11元)や「パンダクッキー」(118元)が日本人からも好評の中華菓子店。こちらで販売する港式月餅「迷你蛋黄奶皇月餅」は、1個36㌘で39元と高価だが、単品売りには珍しく、ウサギが描かれたかわいい缶に入っている。鮮やかな黄色の月餅は、塩漬け玉子が入った濃厚なカスタード餡が、バターたっぷりのしっとりとした皮に包まれていて、洋菓子のような味わいだ。電子レンジで20秒ほど温め風味をより引き立て、コーヒーと楽しんで。

 

本場仕込みの味わい やさしい甘じょっぱさが魅力

 中国台湾の代表的月餅の1つである「蛋黄酥」。パサパサ、ザクザクの、パイのような生地の中に、玉子の塩漬けとこしあんが入っている伝統的な菓子だ。

パンマスターコンテストで世界チャンピオンを受賞した、呉宝春氏が営むベーカリー「呉宝春麦店」。店内ではこの台式月餅を「こしあん」「カスタード」「蓮のタネあん」の3種類の餡で用意している。今回は、オーソドックスなこしあんの「豆沙蛋黄酥」(15元/個)を購入。ツヤツヤ、小ぶりでまん丸の月餅は、玉子の塩漬けが控えめな味のうえ、あんこも少なめなので、軽いしょっぱさと、ほのかな甘みがバランスよく、全体的にあっさりとした風味。1個で2度おいしい味付けだ。

同店では月餅のほか、各種焼きたてパンとスイーツも揃える。休日や仕事の合間に立ち寄り、本格的な台湾の味を堪能してみては?

~上海ジャピオン~

 

Comments are closed.